2023年2月11日の集会は、3年ぶりにリアル開催となりました。前夜の大雪にもかかわらず、仙台国際センターには約350人が集まりました。
開会後、状況報告に続いて、植村隆さん(元朝日新聞記者・現週刊金曜日社長)が「アベ政治が歪めた歴史認識」と題して講演しました。(下に講演要旨)。
最後に「宣言」を採択し、会場から仙台市役所前までデモ行進を行って、私たちの思いをアピールしました。
<講演要旨>
仙台は朝日新聞記者として最初の赴任地です。死刑冤罪である松山事件の再審無罪判決の記事は私が書きました。冤罪も慰安婦問題も国家権力によるでっちあげという共通点があります。その後大阪に移り在日韓国人を取材していた1991年8月、金学順さんが「挺身隊」の名で騙されて「慰安婦」とされ被害を受けた証言について記事を書き、社会面トップで報道されたのです。その翌日に金学順さんが突然記者会見すると、他の被害者も次々と証言を始めました。
それから23年後の2014年、私は週刊誌上で西岡力氏から「捏造記事を書いた」と決めつけられ、櫻井よしこ氏からも「日本国と日本人の名誉を傷つけた」と叩かれました。朝日新聞が捏造を否定したものの、私自身や娘に対するバッシングや脅迫は激しくなりました。しかし1991年当時は産経新聞でさえ「強制的に連行された」等と報道していたのです。この事情は海外でも報道され、国連の報告書にも盛り込まれました。
こうしたバッシングの背後に存在するのは、日本にとって不都合な真実を隠蔽し都合よく歴史を書き換えようとする「歴史修正主義」の思想と運動です。1993年の河野談話を契機に1997年には中学校の歴史教科書7社全部に「慰安婦」が記述されましたが、安倍晋三氏らが記述削除をめざす運動を始めました。2014年に「済州島で女性を強制連行した」との吉田清治氏の証言は虚偽だったとして朝日新聞が記事削除を発表すると、まるで慰安婦の強制連行がすべて虚偽であったかのように喧伝し、朝日新聞の責任にすり替えました。
私は2015年に西岡・櫻井両氏を東京地裁・札幌地裁にそれぞれ名誉棄損で提訴しました。櫻井氏は相次いで訂正記事を出し、ライバル社の北海道新聞記者さえ「バッシングは言いがかり」と証言したにも関わらず、2018年札幌地裁は、櫻井氏が取材もせずに捏造ときめつけた責任を免除する不当判決を出し最高裁でも敗訴しました。東京地裁も虚偽情報に基づく西岡氏のバッシングを免責し、最高裁も追認。「石が浮かんで木の葉が沈む」酷い判決でした。しかし娘を脅迫した男性に対する3つめの裁判は完全勝利でした。
安倍晋三氏ら歴史修正主義者こそ真実を捻じ曲げ歴史教育に介入しています。杉田水脈氏もその一人です。1985年西ドイツのヴァイツゼッカー大統領は「他の人々に対する敵意や憎悪に駆り立てられないようにしてほしい」と述べましたが、日本は嫌韓意識を克服できていません。2012年(第二次安倍政権)以後、「国境なき記者団」が発表する世界報道自由度ランキングの順位は下がり続け2022年は71位。多くのジャーナリストが委縮しています。2017年に平和と人権を守るジャーナリストを育てるための「日韓学生フォーラム」を立ち上げました。私を支援してくれた週刊金曜日の「ヒラ社長」にもなりました。日本はアベ政治によって無茶苦茶にされましたが、こんな時代だからこそ他者と共に生きる寛容な心と勇気が必要です。
<宣言>
私たちは今日、第四九回「信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会」を開催しました。
私たちの集会が掲げる、信教の自由、思想の自由、報道の自由とは、民主主義がその健全性を保つために必要不可欠な大原則です。この日本を成熟した民主主義社会として維持運営していくためには、これらの大原則にのっとって、少数者の意見や弱者の権利を尊重していく精神を共有していくことが大切です。しかし、日本の歴史においては、戦後史に限ってさえ、政治や行政の様々な場で専横で独善的な反民主主義的な行為が横行してきました。半世紀前に私たちの集会の出発点となった靖国神社国家護持法(案)と「建国記念の日」制定への反対運動は、そのような反民主主義的政治や行政のあり方に対する異議申し立てでした。
私たちは、少数者の意見に耳を傾けることなく、社会的弱者の基本的権利を踏みにじるような政治や国家行政の運営に対し、強く反対します。そして、日本の政治と行政が、どのような状況下にあっても、信教の自由、思想の自由、報道の自由の権利を尊重するよう強く求めます。近年の東アジアにおける軍事的な緊張の高まりの中で、政府は、昨年一二月以降、正面きった議論を一切行わずに「国家安全保障戦略」等安保三文書の改訂や敵基地攻撃能力の保有、そして防衛費の大幅増にむけて、行政と財政の舵を大きく切り始めました。このような状況の中で、信教、思想、報道の自由がないがしろにされる危険性を、私たちは危惧します。私たちの国家は、過去に、国民の分断や敵対と民族主義的排外主義とが相互に共振しあいながら侵略戦争へと突き進んでしまった歴史を経験しているからです。このような中で、私たちは、反民主主義的な国家運営や行政運営がなされる場合には、日本の国民として、市民として、これに反対し、民主主義の原則が貫かれるよう、糺(ただ)していかなければなりません。
以上のような趣旨で、私たちは、人権・平和・民主主義を定めた日本国憲法を護り、現在の政権による多数派の横暴と暴走に抗議し、信教、思想、報道の自由を守る決意を新たにし、そして、次の通り宣言します。
一 私たちは、今日の「建国記念の日」とその奉祝行事に反対します。もとより「建国記念の日」に歴史的根拠があるはずもありません。これは大日本帝国憲法(旧憲法)時代にその冒頭に掲げられた「万世一系の天皇」神話に基づく「紀元節」を復活させたものだからです。私たちは、人権・平和・民主主義をうたう日本国憲法の施行日を記念する「憲法記念日」こそが、現在の日本の誕生を祝うのにふさわしい日であると確信します。
一 私たちは、首相や閣僚による靖国神社や伊勢神宮への参拝、靖国神社の国家護持の試み、無反省な旧天皇制賛美、政教分離原則をないがしろにする動きや、天皇を政治的に利用しようとする一連の政治的行動に反対します。
一 私たちは、国民の「表現の自由」や「知る権利」をはじめとする基本的人権を侵害し、国民主権の否定と戦争する国家への一連の制度改変の動きに反対します。さらに、武器輸出、特定秘密保護法、安保関連法(集団的自衛権の行使)、共謀罪、九州から沖縄にかけての新基地建設・整備などこれまで理不尽に進められてきた軍拡政策はもちろんのこと、昨年十二月に国会での議論もなく閣議決定した「安保関連三文書(国家安全保障戦略)」策定と防衛費GDP比二%への大幅増額方針に対し、正面から反対します。
一 私たちは、公立学校その他での「日の丸・君が代・元号」の強制、「特別の教科 道徳」、教育と学問研究に対する政党・行政の不当な介入や、教育の民主化を妨げる動きに反対します。また私たちの住む宮城県内の二つの県立中学校において復古的・国家主義的な歴史教科書の使用を続けている宮城県教育委員会に対して、強く抗議します。
一 私たちは、報道機関が、これらの問題において権力批判と監視の役割をしっかりと果たすよう求めます。行政に対し、報道や取材活動における自己規制や忖度を行わず、報道への圧力や介入に対し反対する姿勢を保持するとともに、原発問題等の公正な報道、犯罪事件における安易な犯人視報道の抑制など、関係者すべてが真実と公正を貫き人権の尊重に努めるよう要望します。
二〇二三年二月一一日
二・一一信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会
靖国神社国家管理反対宮城県連絡会議加盟四九団体 (アイウエオ順)
革新自治体をそだてる学者文化人の会
核兵器廃絶を願うキリスト者の会
カトリック正義と平和仙台協議会
河北新報労働組合
子どもと教科書みやぎネット
司法反動化反対宮城県連絡会議
自由法曹団宮城県支部
新日本婦人の会宮城県本部
生活協同組合あいコープみやぎ
青年法律家協会宮城支部
仙台キリスト教連合
仙台市職員労働組合
仙台平和を求めるキリスト者の会
仙台靖国法案阻止キリスト者連絡会
創価学会青年部宮城県憲法研究会
テロにも戦争にもNO!の会
東北工業大学教職員組合
東北大学学生キリスト教青年会
東北大学職員組合
東北放送労働組合
東北労働弁護団
日本科学者会議宮城支部
日本キリスト改革派教会
日本キリスト教団東北教区社会委員会
日本山妙法寺
日本出版労働組合連合会仙台地域協議会
日本バプテスト連盟東北地方連合
日本婦人有権者同盟仙台支部
日本放送労働組合東北支部
日本民主法律家協会東北支部
婦人民主クラブ全国協議会宮城支部
婦人民主クラブ(再建)宮城県協議会
平和・民主・革新の日本をめざす宮城の会
平和をつくり出す宗教者ネットinみやぎ
宮城学院女子大学教員組合
宮城教育大学教職員組合
宮城県教職員組合
宮城県高等学校・障害児学校教職員組合
宮城県憲法を守る会
宮城県護憲平和センター
宮城県私立学校教職員組合連合
宮城県平和委員会
宮城憲法会議
宮城県歴史教育者協議会
宮城県労働組合総連合
宮城脱原発風の会
宮城婦人問題連絡会
宮城歴史科学研究会
立正佼成会仙台教会
第49回集会で講演された植村隆さんの映画会の情報がありましたので、掲載します。
2・11 信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会
主催
靖国神社国家管理反対宮城県連絡会議