2025年2月11日、仙台国際センターには約400人が集まりました(さらに約50人がオンライン参加しました)。開会後、状況報告に続いて、油井大三郎さん(歴史学者)が講演しました。最後に「宣言」を採択し、会場から仙台市役所前までデモ行進を行って、私たちの思いをアピールしました。
<講演要旨>
現在の世界では、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルのガザ攻撃など、軍事力で問題を決着しようという動きが跋扈し、トランプ・プーチン・習近平といった権威主義的政権が台頭していて、新たな「戦前」の様相を呈している。
19世紀は、軍事力で領土や市場を拡大するのが当たり前の時代だった(旧外交)。しかし第一次世界大戦後、平和的手段で紛争を解決する外交(新外交)が定着してきている。1917年のロシア革命後にソ連が出した「平和の布告」が、講和条件として「無賠償・無併合・民族自決」の3原則を示したことが「新外交」の始まりだった。これに触発されてアメリカが出した「ウイルソンの14ケ条」に基づいて、国際連盟やベルサイユ講和条約が作られた。しかしドイツへの法外な賠償金が示すように、ベルサイユ講和条約には旧外交と新外交が混在していた。
日本では、吉野作造がこうした動きを「新しい時代の到来」と高く評価し、その弟子だった鈴木義男も第一次大戦直後のヨーロッパを視察して、新外交の到来を実感した。しかし当時の多くの日本人は、日清・日露戦争の勝利に酔い、近衛文麿が「ウイルソンの新外交論は美辞麗句で卑屈」と評したように、軍事優先の旧外交のまま第二次大戦に突っ走った。当時のアジア新外交の焦点は、中国の民族自決を認めるか(列強諸国が関税自主権や領事裁判権を放棄するか)否かだった。中国の「国権回復運動」は、日本の中国利権を承認したベルサイユ講和条約の旧外交に対する抵抗運動だった。当時はソ連もアメリカも中国の国権回復運動を支援しており、満州事変は国権回復運動の満州への拡大阻止でもあった。満州事変を避ける道はなかったのか。1920年代の中国では、国民党政府と軍閥政権が拮抗していた。日本の外務省は、外相・幣原喜重郎を中心に、国権回復運動に配慮する立場で、国民党政府との交渉を重視していた。しかし軍部と(軍部出身の)田中義一は軍閥政権を重視し、武力によって満州利権を守ろうとした。こうした世界情勢の認識の歪み、軍事優先の外交、そして憲法における文民統制条項の欠如ゆえに、満州事変を避けられなかった。
この教訓を現代にどう活かすべきか。いま東アジアには複数の緊張関係がある。確かに中国の台頭は著しい。中国は1978年の改革開放から自由貿易体制に参加し、外国資本を受け入れて低賃金労働の産物を輸出することで潤ってきた。しかし中国は東アジアの大帝国として君臨してきた時代と、欧米列強に植民地化されてナショナリズムを燃やしてきた時代しか知らず、複雑に結びついた国際社会の一員として行動するルールを習得するまでに、まだ時間を必要としている。中国の南シナ海での行動は、いずれも資源の共有を進め、ASEANにならって北東アジアに経済共同体を作れば緩和できる。海軍力で制海権を維持するのではなく国際法に基づいて行動するように説得すべきである。北朝鮮が核開発を急いでいるのは、アメリカに対抗するためであって、日本を脅かしているのではない。いま必要なのは、朝鮮戦争の講和条約の締結である。日本やアメリカは台湾を「中国の一部である」と認めており、ロシアの独立国ウクライナへの侵攻とは異なる。台湾の世論は「現状維持」であり、これを無視して「台湾独立が台湾有事になる」と喧伝し、それを口実に軍事力を強化する動きがあるが、軍事力による抑止は際限のない軍拡につながる危険をもつ。日本と台湾との間に安全保障協定はないので、仮に中国が台湾を併合しても自衛隊を派遣してまで阻止する法的枠組みはない。中国に対する認識を見直し、軍事優先の判断を避け、地域的経済共同体を北東アジアに作り、一部の自衛隊OBの憲法9条軽視を阻止して、紛争を平和的に解決する「新外交」の精神を活かすことが必要である。その意味で、国連改革も必要である。「国連総会が多数で可決した議案については、常任理事国は拒否権を発動できない」というように改革すれば、国連が機能するようになるだろう。
<宣言>
私たちは、第51回目の「信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会」を開催しました。1967年の「建国記念の日」制定、続く靖国神社国家護持法案の上程に対して、宮城県連絡会議がつくられ、1975年からは、毎年2月11日に集会を開いています。
ウクライナでは、侵攻3年目を前に激しい戦闘が続き、朝鮮民主主義人民共和国軍の参戦も伝えられています。昨年末には、韓国で戒厳令が出され、民主主義を求める人々が立ち上がっています。シリアでは、アサド独裁政権が倒れました。新しい年、パレスチナでは、ガザ地区で待ち望んだ停戦が発効しました。すべての戦争を止めて、人々の真の自由と解放につなげていきましょう。
アメリカ合衆国ではトランプ大統領が就任し、自国の利益と、民族や性別などによる差別と排外主義を進める政策を実行しています。巨大IT産業が私たちの個人情報を集中し、権力と富を独占し、政治や経済、一人ひとりの暮らしの隅々まで支配しようとしています。私たちが、平和に、差別なく、自由に力を合わせて生きていける社会を未来のこどもたちに残すことができるのか、2025年、歴史の岐路にたっています。また、地球環境は、より危機的な状況が生まれています。トランプ大統領は、この問題でも、流れを変えようとしています。
私たちは、肌や目の色、性別、民族などの違いをこえて、少数者の声に耳を傾け、皆が人間として幸せに生きることができる世界をつくるために、世界の人々とつながり、力を合わせていくことをあらためて決意します。80年間、「ノーモアヒロシマ・ナガサキ」を訴え続けてきた日本被団協のノーベル平和賞受賞は。核戦争を止める新しい希望の一歩です。同時に、福島原発と被災地の状況は、核をなくす取り組みがより大切になっていることを示しています。当事者が声をあげることから始まります。そのことは、優生保護法は憲法違反であることが最高裁判決で示され、国の責任で、根本的な差別の根絶と賠償が始まっていることでもよくわかります。
石破内閣は、昨年末「台湾有事」のための新たな日米共同作戦計画をつくり、南西諸島の「軍事要塞化」を進め、アメリカ、イギリス、フランスなどの国々との軍事演習を強めています。沖縄では、米兵の暴行事件が繰り返され、怒りと「沖縄を再び戦場にさせない」の声が日増しに強く大きくなっています。県内では、昨年も、王城寺原演習場、そして新たに松島基地でも、沖縄米軍や英仏軍との実戦訓練が強行されました。
一方、政権が巨額の裏金をつくり権力をふるってきたことについて、石破内閣は、「改革」とは名ばかりの居直りを続けています。戦争への歩みと政治の腐敗はひとつのことです。過去に、国民の分断や敵対と民族主義的排外主義とが結びついて侵略戦争へと進んだ歴史を繰り返さないために、今が正念場です。
被災地では、人々の生きるためのたたかいが続いています。能登半島の人々をはじめ、被災地は置き去りにされています。昨年12月、東北電力が女川原発の再稼動を強行しました。福島原発の事故の原因、原発が今どうなっているのか、14年たってもわかりません。廃炉の方法も費用も期間も見通しはなく、故郷に戻れない人もたくさんいます。さらに、女川原発では、核のごみの貯蔵施設建設を、住民には何一つ説明なしに進めようとしています。事実上の最終処分場です。私たちは、子どもたちに「核のない未来」を残します。
私たちは、「信教の自由・思想の自由・報道の自由」を尊重するよう強く求めます。人権・平和・民主主義を定めた日本国憲法を護り、「信教、思想、報道の自由」を守る決意を、新たに宣言します。
一 私たちは、「建国記念の日」とその奉祝行事に反対します。「建国記念の日」に歴史的根拠はありません。大日本帝国憲法(旧憲法)時代にその冒頭に掲げられた「万世一系の天皇」神話に基づく「紀元節」を復活させたものだからです。私たちは、人権・平和・民主主義をうたう日本国憲法の施行日を記念する「憲法記念日」こそが、現在の日本の誕生を祝うのにふさわしい日であると確信します。
一 私たちは、首相や閣僚による靖国神社や伊勢神宮への参拝、靖国神社の国家護持の試み、無反省な旧天皇制賛美、政教分離原則をないがしろにする動きや、天皇を政治的に利用しようとする一連の政治的行動に反対します。
一 私たちは、国民の「表現の自由」や「知る権利」をはじめとする基本的人権を侵害し、国民主権の否定と戦争する国づくりへの動きに反対します。さらに、武器輸出、特定秘密保護法、安保関連法(集団的自衛権の行使)、共謀罪、新基地建設・整備などの軍拡政策、防衛費の大幅増額とそのための増税に反対します。学問研究に対する政党・行政の不当な介入や、教育の民主化を妨げる動きに反対します。また私たちの住む宮城県内の二つの県立中学校において復古的・国家主義的な歴史教科書の使用を続けている宮城県教育委員会に対して、強く抗議します。
一 私たちは、報道機関が、これらの問題において権力批判と監視の役割をしっかりと果たすよう求めます。行政に対し、報道や取材活動における自己規制や忖度を行わず、報道への圧力や介入に対し反対する姿勢を保持するとともに、原発問題等の公正な報道、犯罪事件における安易な犯人視報道の抑制など、関係者すべてが真実と公正を貫き人権の尊重に努めるよう要望します。
2025年2月11日
第51回 2.11信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会
靖国神社国家管理反対宮城県連絡会議加盟49団体 (アイウエオ順)
革新自治体をそだてる学者文化人の会
核兵器廃絶を願うキリスト者の会
カトリック正義と平和仙台協議会
河北新報労働組合
子どもと教科書みやぎネット
司法反動化反対宮城県連絡会議
自由法曹団宮城県支部
新日本婦人の会宮城県本部
生活協同組合あいコープみやぎ
青年法律家協会宮城支部
仙台キリスト教連合
仙台市職員労働組合
仙台平和を求めるキリスト者の会
仙台靖国法案阻止キリスト者連絡会
創価学会青年部宮城県憲法研究会
テロにも戦争にもNO!の会
東北工業大学教職員組合
東北大学学生キリスト教青年会
東北大学職員組合
東北放送労働組合
東北労働弁護団
日本科学者会議宮城支部
日本キリスト改革派教会
日本キリスト教団東北教区社会委員会
日本山妙法寺
日本出版労働組合連合会仙台地域協議会
日本バプテスト連盟東北地方連合
日本婦人有権者同盟仙台支部
日本放送労働組合東北支部
日本民主法律家協会東北支部
婦人民主クラブ(再建)宮城県協議会
平和・民主・革新の日本をめざす宮城の会
平和をつくり出す宗教者ネットinみやぎ
宮城学院女子大学教員組合
宮城教育大学教職員組合
宮城県教職員組合
宮城県高等学校・障害児学校教職員組合
宮城県憲法を守る会
宮城県護憲平和センター
宮城県私立学校教職員組合連合
宮城県平和委員会
宮城憲法会議
宮城県歴史教育者協議会
宮城県労働組合総連合
宮城脱原発風の会
宮城婦人問題連絡会
宮城のうたごえ協議会
宮城歴史科学研究会
立正佼成会仙台教会
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2・11 信教・思想・報道の自由を守る宮城県民集会
主催
靖国神社国家管理反対宮城県連絡会議